過失相殺

交通事故事案でしばしば問題となる「過失相殺」(民法722条2項)にいう「過失」とは、法的な注意義務違反というほどに厳密なものではなくてもよく、一般的な「落ち度」ないし「不注意」といった程度のものも含むと考えられています。

運転者や助手席のシートベルト不着用の場合

 そこで、事故被害者の方がシートベルトを着用していなかった場合、過失相殺されることがありうるか、ありうるとしてその割合はどの程度かということが問題になることがあります。シートベルトを着用していた運転者は軽傷ですんだのに、していなかった助手席の同乗者は大怪我を負った場合、シートベルト不着用が損害の拡大に影響したのではないか、そしてシートベルト不着用は722条2項にいう「過失」に該当するのではないかというところです。
 この問題については、運転席や助手席については、従前から比較的過失相殺は認められやすく、2割程度の過失相殺を認定した裁判例も少なからずありました。

後部座席でのシートベルト不着用の場合

 これに対し、後部座席の同乗者については、かつてはシートベルト着用が法的に義務化されていなかったこともあり、不着用も「過失」とまではいえないとして、過失相殺を否定した裁判例が一般的でした。しかし、最近では過失相殺を肯定する裁判例が増えてきているようです。10%程度の相殺をした判決もあります。平成20年6月の道路交通法改正で、後部座席についてもシートベルト着用が義務化されたことを受け、そのような動向が出てきたようです。

シートベルトを着用しましょう

 警察庁の統計によると、平成20年度以降も、一般道では後部座席のシートベルト着用率は30パーセント台とほぼ横ばいの状態が続いており、乗車の際の義務として社会的に浸透したといえるかどうかは疑問がありますが、司法判断においては不着用に対する評価が厳しくなってきたことは確かでしょう。安全のためにも、必ずシートベルトは着用したいものです。私も、この件が問題になった事案を最近扱い、それ以来タクシーに乗る時など、必ずシートベルトを着けています。