こんにちは、弁護士の泉本です。
今回は、「交通事故とうつ病」について述べていきたいと思います。

事故がきっかけでうつ病に

交通事故の被害者の方が,事故をきっかけにうつ病に罹患されることがしばしばあります。事故自体のショック・恐怖,負傷による苦痛,将来への不安などが原因となり,発症することが多いようです。
厚生労働省のホームページによると,交通事故による重傷者の場合約3割の方が,事故から約1か月後にうつ病やPTSDなどの精神疾患を発症するとのことです。

うつ病は,事故との因果関係がしばしば問題になります

交通事故の後,被害者がうつ病を発症した場合,しばしば因果関係が問題になります。例えば地面に体を強打して骨折し,それが原因で関節可動域が減少したというようなケースと異なり,事故が原因でこうなったということがはっきりと分かりにくい上,うつ病の発症には患者のそれまでの生活環境や性格的な要因も関係するからです。
そのため,保険会社はしばしば,因果関係を否認し,あるいは大幅な寄与度減額(患者本人の生活環境や性格的なものが大きく影響したとして)を主張することがあります。
裁判例でもしばしば争われており,結論も個別的です。

当事務所でも経験があります

当事務所でも,事故後うつ病になられた方の事案を経験したことがあります。その方のお怪我自体はそれほど重傷ではなく,事故の翌日から出勤されていたのですが,無理を重ねたため治療期間の途中で倒れ,長期の休業を余儀なくされました。そして休職を始めて間もなく,将来への強い不安に苛まれ,うつ病を発症されました。発症は事故から3か月以上経過したところでした。
その方は,うつ病の治療のため心療内科に通院され,また休職期間は予定していたより長くなったようです。その間,休業補償や治療費は,相手方保険会社が全額支払っていました。
そして,最終的に後遺障害等級は非該当となったため,私たちは通院期間分の慰謝料を相手方保険会社に請求しました。それに対する相手方保険会社の回答は,「これ以上払うべきものはない。」というものでした。事故とうつ病の因果関係は認められないため,休業損害の相当部分と心療内科の治療費は本来加害者の負担すべきものではないとして,すでに支払ったそれらの金額と通院慰謝料を相殺した上でのゼロ回答ということでした。事故が比較的小さかったことや,うつ病の発症が事故後相当期間経過した後だったことも,因果関係を否定する方向に働く事情だったのでしょう。
交渉を重ねるうちに,一定程度の因果関係は認めるようになりましたが,それでも事故の寄与度は50%に過ぎないなどと主張し,これ以上払うものはないという結論は維持したままでした。
そこで私たちは,紛争処理センターに申立を行い,また心療内科の主治医に面談をお願いしました。面談では,ご本人やご親族にうつ病などの既往症がないこと,ご本人が特にうつ病になりやすい性格ではないこと等を聞き取りました。
そして,医師の意見書を証拠として提出して話を進めた結果,事故との因果関係が8割認められ,相応の慰謝料を獲得することができました。

少額でもぜひご相談を!

交通事故とうつ病の因果関係の問題は,一般の事故被害者の方が説得的に主張・立証をすることが難しいところでしょう。
そのため,保険会社に充分な反論もできないまま,おかしいと思いつつも,相手方の言い値で示談している方も多いかと思います。
諦めずに,是非とも一度は御相談下さい。少額でも結構です。怪我で痛い目に遭い,精神的にもひとかたならず辛い思いをした上に,相手方に対して何も言えないまま終わってしまうのでは,余りに残念ではないでしょうか。
こういった難しいケースで,相手方に対して自分の言い分を伝え,適正な解決に導くことは,私たちとしても大変やりがいを感じるものです。
以上