支払が遅れたら遅延損害金がつきます。

民法の規定では,金銭債務が履行遅滞になった時(分かりやすくいえば,支払われるべき時に払われなかったということです),履行期(履行すべき時)から元本に対し年5%の割合で遅延損害金が発生するとされています。例えば,100万円の支払が1年遅れた場合,借主は105万円にして返さなければならないということです。貸主が裁判を起こし,その言い分が認められればそのような判決が出されます。

 

交通事故の場合,遅延損害金はいつから発生するのでしょうか?

それでは,交通事故の賠償金の場合,遅延損害金の発生時期はいつでしょうか?

これについては,判例上確定した扱いがあります。事故時=履行期であり,事故の発生時から遅延損害金が発生するとされています。例えば平成26年1月1日に発生した交通事故により,被害者に1000万円の損害が生じた場合,加害者は平成27年1月1日には1050万円支払わなければならないということになるのです。

この扱いには少し違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。交通事故の損害は通常(死亡事故は除いて),被害者の治療中の損害(治療費・入通院慰謝料・休業損害など)と後遺障害による損害(後遺症慰謝料・逸失利益)に分けて算定されます。事故後相当期間が経ってからでないと損害の全体は明らかになりませんし(治療期間がどれくらいになるか,どのような後遺症が残るかといったことまで,事故後すぐに見通しが立つことはまずありません),さらに損害額を具体的に確定する段階でも,数学の問題のように答が1つに決まることはまずありません。

それにもかかわらず,事故の瞬間に一定の確定した額の損害が発生したと見なした上,その賠償は事故後直ちに行われるべきものであったと評価するのですから,考えてみれば不思議な話です。

それでもこのような扱いは,被害者にとってはかなり有利です。少なくとも理論上は,事故から解決日までの遅延損害金をすべて受け取ることができるというわけですから,例えば事故から解決まで2年を要した

場合,金額はもとの1割増になるのです。

 

 すでに払われた金額はどう計算されるのでしょうか?

交通事故の裁判の場合,訴えを起こすまでに加害者(多くはその保険会社)が治療費や慰謝料,休業損害の一部等を払っていることがよく見られます。

その場合,すでに払われた分を損害全額から引いて請求額を確定することになりますが,遅延損害金との関係ではどうなるのでしょうか?

これについては,支払時に遅延損害金が発生していれば,支払額は遅延損害金から充当していくという扱いが判例上認められています。この方式で計算すると,例えば損害総額が1000万円であり,事故の半年後に100万円が支払われたとすれば,その時点での遅延損害金は25万円ですから,100万円のうち元本に充当されるのは75万円となり,損害残額(元本)は925万円となるのです。損害額の元本から支払われた額をゴッソリと引くよりも,だいぶん被害者に有利になりますね。

 

示談や和解ではどのような扱いなのでしょうか?

今まで述べてきた遅延損害金の扱いは,基本的に裁判で判決に至った場合の話です。裁判外で解決するいわゆる示談や,裁判でも和解で終了する場合,遅延損害金が100%考慮されることはほぼありません。

示談では表立って遅延損害金が出てくることはありませんし,裁判上の和解でも半分も考慮されることは珍しいでしょう。

そうすると,示談や裁判上の和解の方が損なようにも思われますが,実際にはそうとも言えません。

裁判を起こしてから判決までは大抵,1年以上かかります。その間の物理的・精神的エネルギーも大きいですし,裁判官の心証如何では損害額が実際より相当低く認定されてしまうこともあります。つまりいろいろなリスクをはらんでいるわけです。

それに比べて示談・和解は比較的早期の解決が可能であり,証拠をトコトン吟味するところまでいかないため,多くの場合エネルギーやリスクが小さくて済みます。

つまるところ,ハイリスク・ハイリターンを選ぶか否かというところでしょうか。われわれはどちらを選ばれた依頼者様に対しても,ベストな解決ができるように致します。