後遺障害等級の認定がされた交通事故被害者の方に、事故後収入の減少がなかったという不幸中の幸いともいうべきケースでは、しばしば相手方保険会社が逸失利益を否定する主張をしてくるというお話は以前にもしました。特に比較的等級の高い方、年収の多い働き盛りの方などについてそのような主張がされることがよくあります。
 

当職での具体的ケースをもとに検証

 ここでは、具体的なケースをもとに、この問題について考えてみたいと思います。

Aさんの場合

 Aさんは、右肩関節の可動域が左肩関節のそれの4分の3以下になり、後遺障害12級が認定されました。
 ただ、Aさんはデスクワークがメインであったため、従来通りの仕事に復帰し、現時点では収入の減少もありません。

Bさんの場合

 Bさんは、左足関節の可動域が右足関節のそれの2分の1以下になり、後遺障害10級が認定されました。
 Bさんは飲食店の店長で、店内を動き回る仕事ですが、何とか現場に復帰し、従来通りの仕事をしています。現時点では収入の減少もありません。

収入減少=逸失利益なしといえるのか?

 これらのケースでは、相手方保険会社はたいていの場合、収入減少なし=逸失利益なしと決まって主張してきます。
 しかし、本当に収入の減少がないという一事をもって逸失利益はないといえるのでしょうか。Aさんのような場合、肉体労働が少ないのでそのようにも思えます。しかし、事務所内の仕事でも重い資料などを運ぶこともあるでしょうから、その時には大変辛い思いをしているかもしれません。仕事の能率が低下し、残業時間や休日出勤が増えたてしまったかもしれません。疲労が蓄積し、夜や休日は家で休んでいるしかないかもしれません。
 Bさんのような仕事ではさらに、身体的負担が非常に大きくなることは明らかですし、従来と同レベルのパフォーマンスを維持するために長時間労働をしたり、同僚の協力を求めることが多くなったという場合もあるでしょう。身体に故障を抱えたため、将来の昇進の可能性が大きく狭められてしまったということもあるでしょう。そのような事情に思いを致すと、時間当たりの収入は実質的に減少している、将来にわたって得られるであろう経済的利益は減少しているといえましょう。
 また、事故がなければ賃金は上昇していたであろうが、昇進が遅れて横ばいにとどまってしまったといった場合も、本来得られるはずだった経済的利益が失われたということができるでしょう。

仕事への支障について検討し主張すべき

 このように、事故の前後の収入の数値そのものを見比べるのではなく、仕事への支障を様々な角度から検討すれば、逸失利益の実態が具体的に明らかになります。
 保険会社からの収入減少なし=逸失利益なしに対し、われわれは、依頼者様のお仕事への影響を具体的・個別的に考え、逸失利益の存在をしっかりと主張して参ります。