中学生くらいになると,大きな事故を起こす危険が高まります

この前お話ししましたように,年の小さい子どもでも,大きな事故の加害者になるおそれはあるものですが,やはり子どもでも年が大きくなるほど,力も強くなり,行動範囲も広くなるため,大きな事故を惹き起こす危険性は高くなります。

けんか等で相手に命に関わるような大けがを負わせたり,自動車やバイクの危険運転等で大事故を起こすのは,その多くが中学生以上でしょう。

 

中学生以上の場合,通常は,民法714条を根拠に親の責任を問うことができません

この前もお話しましたが,民法714条には,「…責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は,その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」との規定があります。ここで「責任無能力者」とされるのは通常,小学生以下です。

そのため,直接の加害者が中学生以上の場合,民法714条を根拠に親権者の責任を問うことはできないのが通常です。そうすると,民法709条・710条を根拠に,加害者本人に責任を問うということになりますが,未成年者に何百万円・何千万円という単位の大金を支払えるだけの経済力があることは滅多にないため,何とか親権者に責任追及できないかが問題となります。

この問題については,様々な議論が重ねられており,平成13年の司法試験にも「未成年者の加害行為に対する親権者の不法行為責任を問う法的構成について論ぜよ。」とストレートに出題されています。

 

自動車事故の場合,比較的スムーズに行く場合が多いです

例えば親が所有する自動車を,子どもが勝手に運転して事故を起こして人にけがを負わせてしまったような場合,所有者である親は通常,自動車損害賠償保障法(いわゆる「自賠法」)3条に基づいて責任を負うことになります。

自賠法3条のただし書きには免責規定がありますが,ほとんどの場合免責が認められることはありません。車のキーをよほど厳重に保管し,なおかつ子どもに運転について厳しく訓戒していたことが立証できるような場合でなければ,ただし書きによる免責は認められないと思われます。

ですから,子どもが親の車を無免許運転して人身事故を起こしてしまったような場合,被害者は通常,所有者である親(の保険会社)から賠償を受けられます。

 

自動車事故以外の事故の場合,やや難しい問題があります

それでは,自動車事故以外の場合は,どのようになるのでしょうか。

この点については,多くの場合,未成年者の年齢・親権者との関係等とも関係して,やや難しい問題があります。

加害者親権者の責任を認めた判決

加害少年の親権者の責任を認めた判例には,次のようなものがあります(最高裁昭和49年3月22日判決)

中学校3年生(事件当時)の少年が,流行の洋服を買う金欲しさに友人を殺害したという事件で,被害者の母親が加害者の両親に慰謝料請求をしたものです。最高裁は,「未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは,監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する。」として,加害者の両親の責任を認めたものです。

このケースでは,①加害者は両親のもとで養育監護を受けていたものであるから,両親の加害者に対する影響力は責任無能力者の場合と殆ど変わらない程強いものがある,②加害者は中学2年生の頃から不良交友を生じ,次第に非行性が深まってにもかかわらず,両親は適切な措置をとらないで全くこれを放任し,一方加害者のさほど無理ともいえない物質的欲望をかなえてやらなかったのみならず,③加害者は家庭的情愛の欠如に対する欲求不満をもつのらせ,その結果強盗殺人に走ったという事情があったものです(原審である広島高裁松江支部における認定)。これらの事情から,加害者両親の監督義務の懈怠と,被害者の死亡の結果との因果関係が認定されたのです。

加害者親権者の責任を否定した判決

これに対し,加害少年の親権者の責任を否定する判決も出ています。比較的最近のものでは,平成18年2月24日の最高裁判決があります。

少年院を仮退院した19歳の加害者が強盗傷人事件を犯したというケースで,親権者にはその事件に結びつく監督義務違反があったとはいえないとされたものです。

加害者は,少年院を仮退院した後に保護観察の遵守事項を守らないで遊び歩くなどし,その中で金銭目当ての強盗傷人事件を犯したというものです。最高裁は,①加害者が間もなく成人に達する年齢にあることなどから,親権者が加害者に及ぼし得る影響力は限定的なものとなっていた,②親権者が仮退院の遵守事項を確実に守らせることのできる適切な手段を有していたとはいい難い,③親権者において加害者が強盗傷人のような犯罪に出ることを予測し得る事情があったとはいえない,④加害者の生活状態が直ちに少年院に再入院させるための手続等を執るべき状態にあったともいえない(加害者は仮退院後,それなりに真面目に仕事もしていたようです)といった事情のもとでは,親権者に上記事件に結びつく監督義務違反があったとはいえないと判断したのです。

このように,㋐加害者の年齢,㋑加害者と親権者との関係,㋒当該事件を予見し回避する可能性の有無,㋓加害者の当該事件前の生活態度といった複数の事情により,親権者の責任に関する判断は分かれるようです。なかなか難しい問題ですが,親権者の責任は一定程度制限するのが,最近の判例の流れであるようです。

(泉本)